野田哲也
1940(昭和15)–
《Diary: May 7th ’86 in Nara》
1986(昭和61)年
シルクスクリーン、木版/紙
56.5×86.0cm
野田哲也は日常生活で出会った光景をモチーフとし、題名は当日の日付にしている。今ならSNSで誰もが心に残る一瞬をとどめて拡散できるが、野田は1960年代からこの手法で作品を制作している。制作スタイルの原点は、子ども時代の宿題の絵日記だった。
この作品では著名な薬師寺の東塔、西塔、金堂などが特別扱いされず地元の風景に溶け込み、題名にふさわしく鯉幟もあるが、画面の右端にさりげなく佇んでいる。
画面の3分の2を超える空は、古都に吹く清々しい5月の風を伝えているのだろう。車窓から眺める作者の心情が察せられ共感を呼ぶ。
古風な木版画と、謄写ファックスで加工した写真をシルクスクリーンで仕上げる現代的な感覚が呼応して独特な世界をつくり上げている。(AJ)
